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コロナ禍で変化する「旅の価値」。世界各国でランドオペレーター事業を展開するフリープラスが目指す先とは

コロナ禍で変化する「旅の価値」。世界各国でランドオペレーター事業を展開するフリープラスが目指す先とは

2021.05.10

GENSENたち

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みなさんにとって、息抜きや楽しみに感じるものはありますか?

素晴らしい景色に触れ、偶然の出会いに喜びを感じ、そこから新しい考えや気づきが生まれる。新型コロナウィルスが私たちの生活に忍び寄る以前、そのような「旅」や「お出かけ」が、息抜きや娯楽の一つだった方もいるかもしれません。

しかし、コロナ禍で今までのように自由に移動できなくなってきました。「観光したい」「旅がしたい」。世界中の多くの方々が、ため息とともに首を縦に振っていると思いますが、それは旅を提供する事業者も同じ。

そのような中、「みんなに寂しい思いをさせるわけにはいかない。コロナ禍にあっても、何かできることはないだろうか」と、観光という切り口から未来を見据えた様々な打ち手を考えている会社があります。その名も「株式会社フリープラス(FREEPLUS inc. )」。別府と縁が深いこの会社の担当者にお話を聞いてきました。

この記事を通して、みなさんと共に「これからの観光」について考えていければ嬉しいです。

フリープラスについて

株式会社フリープラス(FREEPLUS inc. )。2007年創業大阪に本社を構え、大分県別府市に支店を構える。事業内容としては訪日旅行事業をはじめ、地域創生事業、ホテルマネジメント事業を実施している。 


今回は、フリープラスのランドオペレーター事業、そしてコロナ禍において観光事業者としてどのような打ち手を考えているのかについて、わたし田中がお話を伺ってきました。

 

観光に切っても切り離せない「ランドオペレーター」とは?

フリープラス別府支店の渡邉花さん。金属リサイクルを手がける企業で、新規開拓営業やベトナム駐在を経験し、その後フリープラスに入社したそうだ。

 

田中:「ランドオペレーターとは、どのようなお仕事でしょうか?」

渡邉さん:「私たちのお客様は海外の旅行会社なのですが、その旅行会社から依頼を受けて、海外のお客様に日本に来ていただくためのツアー手配を行なっています。手配内容は、ホテルやバスなどの交通手段や飲食店の予約、観光施設やガイドの調整など多岐に渡ります。また、ツアーには主に2パターンあり、海外の旅行会社がツアーを企画するものと、私たちへ企画内容を相談されるものとがありますね。」

田中:「観光と一言でいっても、様々なお仕事があると思うのですが、なぜフリープラスはランドオペレーター事業を推進することにしたのですか?」

渡邉さん:「まず会社としては、創業者がすぐに海外に展開できる事業、サービス業を展開したいという考えから始まりました。フリープラス設立当初、アジア地域をメインにランドオペレーター事業を行なっている大手企業はとても少なかったのです。その理由は、利益率が低く、変更等の工数が多かったからです。」

田中:「どのような変更なのですか?」

渡邉さん:「変更というのは、例えばツアー参加者が急に欠席になったり、ツアーの3日前に予約を大きく変更しなくてはいけなくなったり。工数がかかるため、大手旅行会社はアジアエリアでランドオペレーター事業を行っていたところが少なかったようですが、私たちは2010年からアジア地域中心でランドオペレーターとしての業務を行なってきました。

しかし、2011年の東日本大震災以降がきっかけとなり、アジア地域、特にその当時メインのクライアントであった中国からのお客様の来日が大幅に減少しました。そこで、それまで中国をメインに展開していた部分を、アジア地域へと変えて拡大していったのです。」

田中:「東日本大震災は、日本に住む私たちにとっても、観光で来日される人にとっても、本当にショッキングでな出来事でしたね。」

渡邉さん:「そうですね。私がランドオペレーターの仕事を始めたきっかけは、「もっと日本の良さを多くの人に伝えたい」という思いがあったからです。ベトナムに滞在していた時、その国の人たちが日本のことを色々と語ってくれたのです。ベトナムハノイ郊外の田舎で洋服の縫製の仕事をしている人から「このミシンは日本製でとても持ちがいいからずっと使っているんだよ」と言ってもらえたことがとても嬉しくて。日本人よりもずっと日本の良さを知ってくれている人がいることにも感動しました。だから私は、日本人が気づいていない日本の素晴らしさをもっと多くの人に知ってほしいと思い、ランドオペレーターのお仕事をスタートしたんです。」

フリープラスが推進するランドオペレーター事業の説明図


ランドオペレーターって奥深い。そこに情熱を持って取り組んでいる渡邉さんの言葉が胸に響きました。しかし現状、コロナの影響で、本来のランドオペレーターとしての事業ができない状況が続いています。そこで、フリープラスが新たに取り組んでいる、オンラインを活用した取り組みがあるとのことで、単独潜入してきました!


単独潜入!世界と地方自治体を繋ぐオンライン商談会

私が今回参加したのは、オーストラリアの旅行会社を対象に開催されたオンライン商談会。

海外の旅行会社向けに開催されたオンライン商談の様子 


「オンライン商談会」は、日本にある
各地域の観光PR担当者が、コロナが終息したらぜひ来てもらいたいという願いを込めて、海外の旅行会社に向けて開催されています。今回のオーストラリアのように、特定の国に対して開催するため、質問も活発に出ており、その土地の魅力を深く知ってもらうことができるのです。対象とする国は自治体などからの依頼で決定しているとのこと。

商談会を実施しての感想を、改めて渡邉さんに聞いてみました。

 

渡邉さん:「今回のようなオンライン商談をやってみて良かったと感じることが2つあります。1つは、オンライン商談会をきっかけに旅行会社の担当者がまだ知らない日本を知って、実際にツアーを作ったり、お客様の提案のきっかけになっていること。実際に、商談会をきっかけにオーストラリアの旅行会社が2022年の四国のツアーを造成してくれました。2つ目は、海外の旅行会社から、私たちの企画したオンライン商談会が楽しく、ためになる。との声をいただけること。各地域の良さが伝わったという喜びを感じます。」

田中:「逆に不安に感じていたところはありますか?」

渡邉さん:コロナ禍で入国制限の緩和がまだ見通せない中インバウンドのプロモーションをやるという企画の提案が自治体の方々にどう思われるのかが不安でした。ただ実際にやってみると、価値を理解いただけてとても嬉しいですね。」

自由に行き来がしづらい今だからこそ、自治体の方々と連携した工夫が求められ、これまでフリープラスが各地で培ってきた繋がりが、今まさに生きているように思います。

 

渡邉さんが考える after COVIDで変わる「観光の未来」とは?

これからの観光について、楽しそうに話す渡邉さん

 

田中:「コロナ禍で、”観光の形”も変化しつつあると感じるのですが、渡邉さんはどのように感じていますか?」

渡邉さん:「2019年までは、海外のツアー会社から私たちが団体を受け入れて、ホテルや旅館にご紹介することが多かったのですが、これからは旅行者自身がより「目的」を持った旅をするようになるのではと思います。それに伴い、旅行者を受け入れる側も「選択」する時代が来る。そして、旅行者側と受け入れ側のニーズが、これまで以上に精度高くマッチすることがより大切になってくるのかもしれません。」

フリープラスが企画開催した、YoutubeLIVEで配信した「別府竹工芸バーチャルツアー」の様子。別府竹細工は、大分県唯一の経済産業大臣指定伝統的工芸品。未来の旅行者が、温泉だけではない、別府ならではの体験に触れてもらえるように見せ方を工夫しています。

 

街中から湯けむりが立ち上る別府の風景

 

田中:「別府にはどのような可能性があるのでしょうか。」

渡邉さん:「別府は観光地として、他の地域に引けを取らないブランドがすでに確立されていると思いますよ。別府と聞いたら何を思い浮かべますか?」

田中:「温泉ですね。別府に来る以前から、別府の大学に行くのであれば、温泉にたくさん入ってお肌がプルプルになるね、なんて家族友人からよく言われました。やはり温泉が大きな魅力だと思います。」

渡邉さん:「そうですよね。フリープラスが別府市と提携を結んで支社を出し、インバウンド誘致に取り組みたい理由のひとつは、別府自体が観光に力を入れており、観光ブランドを確立して、面白いというところです。別府、大分県は「おんせん県」としてPRしていますし、それが他県にも伝わっている。ただ、インバウンドに目を向けてみるとまだまだ別府や九州の認知度が低かったり、魅力をうまく伝えられていなかったりします。そこが大きな可能性だと思います。」

温泉をはじめとする別府の可能性について楽しそうに話す渡邉さん

 

この「観光地としてのブランド」で別府をみていくと、別府には大きなポテンシャルがあることに気がつきます。例えば、立命館アジア太平洋大学があり、およそ100ヶ国の人が住んでいます。その影響で、海外のレストランが数多くあったり、バスの表記が英語以外にも、中国語、韓国語と用意されていたり、さらに地元の人たちはとてもフレンドリー。別府で温泉に浸かっていると必ずと言っていいほど地元の人とたわいもない会話が生まれます。

しかし、今コロナ禍で観光客が大幅に減少しているのが現状。

これからの旅行スタイルは、人との距離を保ちながら、少人数で楽しむ旅が基本となってくると考えられています。それに伴い、農家に滞在する「農泊」や、民泊のさらなる活用、またそこで地元の人との交流が活発になり、その土地ならではの楽しみ方を、より多くの人に体験してもらえるのではないかと渡邉さんは話します。

裸になって温泉に浸かっていると、国も文化も超えたあったかい繋がりが自然と生まれてきます。物理的な距離は離れても、心はぐっと近く。これが、温泉文化が根付く別府に存在するポテンシャルの一つのように感じます。旅や観光の価値。形は変わっても、そこでの出逢いに感動し、またいつか訪れようと思うその連鎖は、国境を越えて繋がる人と人との心の距離とも言えるのかもしれません。

渡邉さん、有難うございました。

 

編集後記

今回の取材のおかげで、コロナ禍だからこそ生み出せる新しい「観光」のスタイルについて考えることができました。オンライン商談会では、別府にいながら他県の魅力を再発見することも。私が今大学で学んでいる観光学にも、自分が実際に参加して体感したこと、当事者からのリアルな声を繋げ、「おんせん県おおいた」に住んでいるからこそ見えてくる、大分・別府の知られざる魅力を発見していきたいと思います!

みなさんも、「これからの観光」について考えていきませんか?

あなたのGENSEN(源泉)は
何ですか?

お客様の笑顔☻

WRITER

田中 真樺

田中 真樺(まなか)

日本

オーストラリアとカナダでの留学を経て貧困の子供に対する教育支援団体の代表を勤めた経験がある。現在大学では留学生を支援する団体のメンバーとフットサル部のマネージャーとして活動中。

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関西から別府に住み始めて、別府の多様的な生活環境や「温泉」だけでない多くの魅力を発見。ライターとしては初心者ですが、温泉という一つの観光資源だけでない多くの素晴らしさを兼ね備えている観光地「別府」を全国、そして世界に発信できるように頑張ります。

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