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「多様性の街 “Beppu” でこれからのユニバーサルを語る」片山俊大氏×小橋賢児氏×山下達夫氏 │ トークイベントレポート

「多様性の街 “Beppu” でこれからのユニバーサルを語る」片山俊大氏×小橋賢児氏×山下達夫氏 │ トークイベントレポート

2022.02.25

プロジェクト

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宇宙産業と私たちはどう関係してくるのか、生活する上で何が起こるのか?専門家から見た別府の可能性とはなにか?多様性の街といわれるが、具体的にはどういうことなのか?

そんな疑問を解き明かすトークイベント「BEPPU UNIVERSAL TALK」が、2022年1月14日、太陽ミュージアム・あせびホールにて開催されました。テーマは「多様性の街 “Beppu” でこれからのユニバーサルを語る」です。

太陽ミュージアムについての記事「車いす、乗ったことある? 太陽ミュージアムに学ぶ共生社会とは」

「社会福祉法人 太陽の家」が主催する太陽ミュージアム企画の第3回目として行われ、会場参加だけでなくオンラインでも同時にライブ配信。片山俊大氏と小橋賢児氏の、講演の様子をリポートします。

超速でわかる宇宙ビジネス

講演のトップバッターは日本における宇宙港開発ビジネスをリードする片山俊大氏。宇宙ビジネスの今と今後について解説しました。

写真提供:社会福祉法人 太陽の家

片山 俊大(かたやま としひろ)

一般社団法人 Space Port Japan 共同創業者&理事

株式会社電通にて幅広いプロジェクトに従事。化粧品や総合電機メーカーのアカウント担当後、日本政府・地方公共団体のパブリック戦略担当を歴任。2015年より宇宙関連事業開発に従事。専門分野は「広告・PR領域全般」「新規事業創造」「M&A」「公共戦略/官民連携推進」「エンタメ・コンテンツ戦略」など。現在は幅広い知見を活かし、講演・ワークショップ等を多数行っている。

世界的に広がる「既存の空港を宇宙港にする」流れ

片山氏:昨年、大分港が日本初の宇宙港(スペースポート)になると発表されました。大分の宇宙港からは、普通の飛行機と同じように水平に離陸し、上空10kmくらいから小型衛星を発射します。

大分港と同様、宇宙港(スペースポート)に参入する流れはアメリカ、南米、アジア、ヨーロッパなど世界的に広まっています。宇宙港は地上に作るものなので、まちづくりや不動産、周辺の産業に影響するんですね。「宇宙産業には関係ない」と思っている人でも、関わりが出てくるでしょう。

すべては妄想することから始まった

ジェフ・ベゾスやリチャード・ブランソン、そして前澤友作氏など一般人が宇宙旅行へ出かけた2021年。宇宙は好き嫌いでなくすべての人に関係するものだと片山氏は語ります。

片山氏:宇宙はすでに生活のインフラになっており20世紀はグローバル時代、21世紀はユニバーサル時代」です。国民の世論や理解が進まないと、宇宙ビジネスは加速しません

すべては本気で妄想することから始まっています。まだ人類が宇宙へ行くことのなかった時代に「ロケットを飛ばして宇宙へ行く」と話をすれば、変人扱いされました。でも彼らの妄想から始まり、その妄想を信じ続け、信念を持ってやり続けた結果が今につながっています。

太陽の家を創設した中村裕(ゆたか)博士も、当初は反発があったり、理解されなかったりと苦労されたと思います。信念に基づいて行動し続けたからこそ今の太陽の家があり、宇宙産業の発展と共通していると感じました。

 

日本の宇宙ビジネスはチャンスの宝庫

写真提供:社会福祉法人 太陽の家

2021年から、ついに一般人でも可能な宇宙旅行が始まりました。日本からの宇宙旅行は、大きな可能性を秘めているようです。

片山氏:宇宙飛行士になるためには、これまで多くの制限がありました。しかし現在では、身長などの身体的基準、学歴など多くの項目が緩和されています。ヨーロッパではすでに、障がいのある方の宇宙飛行士の募集も始まりました。

現在ある世界の宇宙港は辺鄙な場所にあるケースがほとんど。「旅行」は、行き帰りも含めたすべての体験です。大分空港の周辺には、神社仏閣が多くある国東や、観光資源が豊富な別府などがあり、これは大きなメリットとなり得ます。

手厚いサービスができるのは、これまでサービスを行ってきた地元の人たちです。大分だったらどんな特色を出すか?何ができるか?それを考え実行することで、より大分宇宙港の魅力が増します。みなさんひとりひとりが、この業界に影響を及ぼす人物です。ぜひみなさんで、大分の宇宙港を盛り立て、ビジネスにつなげていきましょう。

ユニバーサルなエンターテインメント

続いての講演は、世界中で映画やイベント制作などを手掛ける小橋賢児氏。幼少期の話から現在に至るまで、自身の経験を通じて感じたユニバーサルについて語りました。

 

写真提供:社会福祉法人 太陽の家

小橋 賢児

The Human Miracle 代表/クリエイティブディレクター

8歳で芸能界デビュー、ドラマ、映画、舞台作品に出演の後、27歳で俳優活動を休業。米国留学や世界旅行を経た後「DON'T STOP!」で映画監督デビュー。以降「Dîner en Blanc」「ULTRA JAPAN」など海外のイベントを日本で実現させる。未来型花火エンターテイメント「STAR ISLAND」の総合プロデュース、「東京 2020 パラリンピック競技大会」閉会式のショーディレクター。2025年「日本国際博覧会(大阪・関西万博)」の催事企画プロデューサーに就任。世界規模のイベントや都市開発、地方創生にかかわるなどマルチな活動を行っている。

 

自分の内側から湧き出る欲求「Want」に従う

小さな頃から宇宙が大好き!でも人の作ったロケットには乗りたくない。廃工場で部品を拾い集め、自作した宇宙船で飛び立つことを夢見ていた小橋少年。芸能界での活動、引退、アメリカ留学など生い立ちを語ります。

小橋氏:いろんなご縁がつながってる、本当にそう思います。今まで僕は、障がいのある方やLGBTの方たちと仕事する機会がありました。その瞬間に感じて行ってきたことが大分で全部つながった気がします。

僕は8歳で芸能界デビューしました。きっかけは勘違いで一枚のハガキで番組に応募したからでしたが、その時は純粋に「Want」の気持ちで動き、縁あって芸能活動を続けていたんです。20代で転機が訪れたきっかけは、クリエイターたちとの出会い。イマジネーションをクリエイトに変える様子を目の当たりにしました。感動と同時に、自分の人間力に劣等感を抱いた僕は、芸能界を休業しアメリカ行きを決意したんです。

アメリカで参加したフェスでは、世界中の老若男女が音楽を共通言語にして、みんながつながる光景を目の当たりにします。我を忘れ周りを気にせず楽しめて、もっといろんなフェスを見たいという欲求が生まれました。これは久々に自分の中から湧き出た「Want」だったんです。

 

目の前のできること・やれることをする

クリエイターとの出会いやフェスの体験を通じて帰国した小橋さん。しばらくは仕事やプライベートが軌道に乗らず、身も心も沈みきってしまいました。病院で肝機能障害と診断され、行動を起こします。

小橋氏:病気がわかって、まずは海の近くに引っ越しました。海で泳いだり走ったりのトレーニングもしていましたね。そんな時、プールを貸し切ったイベントをすることになり、ロゴ作りや装飾など一通りのことを手掛けました。「目の前の環境を生かし、やれることをやる」そんな風に進めていたら、そのうちにイベント制作で声をかけてもらえるようになったんです。

 

特別なことをしなくても、みんな美しい

「東京 2020 パラリンピック競技大会」の閉会式では閉会式のショーディレクターを務めた小橋氏。衣装や演出の意図を語りました。

小橋氏:パラリンピックの閉会式で「障がい者、がんばってます!」みたいなものは、違うかなと思いました。この世界はすでに、見方を変えれば美しいものです。ありのままの姿をみせたら美しいし、みんながキラキラ輝いてる、それを伝えるべくショーを構成しました。

みんなが宇宙に行ったら、フラットなんじゃないかと思うんです。今は分断が減りつつある時代で、特に若者は世界中でフラットな人が増えています。宇宙規模で地球を考えればみんな仲間で、あらゆる多様性が存在しているんです。宇宙への道の始まりを大分からつなげたい。そして、エンターテンメントを「翻訳言語」として、今後も活動していきたいと思います。

 

トークセッション「宇宙ビジネスの本質と多様性」

講演が終わり、片山氏と小橋氏、そして太陽の家 理事長の山下達夫氏。3名によるトークセッションが行われました。

太陽の家から宇宙飛行士を!

山下理事長:現在40兆円程度の宇宙ビジネスは、今後20年後には100兆円を超えると言われています。最終的には太陽の家から宇宙飛行士を出したいんですよ。人に言うとみんな笑うけどね。中村裕先生は太陽の家を作るときも非難されたことだし、これからは誰もが宇宙に行くのも当たり前の時代になりますね。

片山氏:そうですね、すでにヨーロッパでは障がいのある方の宇宙飛行士募集は始まっていますし、アルテミス計画では性別や人種など多様性を目指す方向ですね。宇宙では無重力環境を活かして車椅子の人も自由に動けますし、太陽の家で培われた知見がむしろ生きるのではと思います。

中村裕先生と理念が近いですよね。当時では常識破りだったことを信念持って実現してる。そんな太陽の家、そして別府に来てみて、どうですか小橋さん?

小橋氏:ものすごい感銘を受けました。昨年のパラの閉会式を通じて、初めて接する障がい者の人が多かったんですが、最初は気を使いすぎちゃうんですよ。でも慣れると、人と人のつながりになりました。障がいだけでなくジェンダーも性格もみんな違う。それをそのまま受け入れる土壌が大分にはあって、宇宙に向かう人につながっていく気がしました。

山下理事長:すべては人の縁ですね。携帯電話なんて、一昔前は考えられなかったのに実現している。宇宙港もそれと同じで、みんなの普通になりますよ。

小橋氏:誰にとっても、宇宙に行くって人生が変わるような体験ですよね。今、世界中の人たちがフラットに戻る動きを見せています。宇宙に行くことは、究極にフラットになることかもしれません。

片山氏:宇宙飛行士のその後のキャリアは、牧師や教師、農家など自然や環境に関心を寄せる人が多いんです。無重力で上下がなく、国境も酸素もない宇宙を体験をすると、地球の偉大さを改めて痛感するみたいですね。空港のある国東は神仏習合のメッカだし、別府には地獄やら鬼やらもあるし、やっぱり大分には可能性がいろいろある気がしますね。

 

一人ひとりに関係する宇宙と多様性

宇宙産業の第一線で活躍する片山氏、そして世界中でエンターテインメントに関わる小橋氏。それぞれの立場での経験や思いから、これからのユニバーサルについて熱く語られた3時間でした。

関係ないと思われがちな宇宙と私たちのつながりや、多様性の街・別府だからこそ期待できること。これから未来へ向けて考えるべき課題や取り組むことなど、それぞれが改めて考えるきっかけになりました。大分から宇宙へ続く道は、いったいどうなるのか。その行方は私たち一人ひとりにかかっているようです。

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