別府には別府八湯がありますが、もう一つ隠された湯があります。湧き上がるアイデアを形にした起業家が集まる、その名も「イノベーター湯」。
第23湯目は、別府市にあるSIC合同会社代表社員で、就労継続支援B型事業所「スバル」を構えていらっしゃる、杉本孝生さんにインタビューさせていただきました。
私は福岡の街で育ち、20歳くらいまでフリーターとしてアルバイト生活をしていました。色々な場所を転々としていたのちに、26歳の時に別府を訪れました。
15年前にハウスメーカーの営業の転勤で別府市の方に移って来た時、別府という町の人や空気、自然など、居心地の良さをすごく実感しました。次の転勤先への辞令を言い渡されたとき「別府を離れたくない!」と思い、別府に踏みとどまることを決意しました。
初めて別府を訪れた時は、旅館やホテルなどのサービス業の仕事しかなく、あまり興味を持てなかったため、別府でもアルバイト生活を続け、借金までして生活をしていたこともありました。そんな中で、声をかけられ始めたのがホームヘルパーの仕事でした。その仕事をしていた時に、障害者の方との縁が生まれました。
ホームヘルパーの仕事を3年間した後、訪問介護会社の取締役副社長として8年間勤務しました。この会社ではほとんどの裁量権を持ちながら仕事をしていましたが、働いている中で、障害者の方の一般雇用例がなかなか無く「みんながみんな、機会があっても就職できるわけではない」ということに気づきました。人によって障害の特性が違うと気づいたことから、『その人にあった訓練をしなければならないのではないか?』と考え、スピンオフして職業訓練の場として、この就労継続支援B型『スバル』を設立しました。
障害を持っていらっしゃる方の中には、引きこもってしまっている人が多い傾向があるため、そういった引きこもりの方を外の世界に連れ出すことができた時に一番やりがいを感じます。
苦労することで言えば、1つは法律面での問題で、もう1つは、各利用者さんの障害特性のマッチングだと思います。どれだけひとりひとりとしっかり向き合えるのかによって、事業が成立するかしないかにも関わってきますし、利用者さん自身の成長にも大きく関わってくるからです。精神障害を持つ方と、知的障害を持つ方はコミュニケーションの部分でマッチすることが難しいのですが、うちでは各利用者さんに向けたコミュニケーションをきめ細かく取っているので、いい形でマッチングすることが多いです。利用者さん、ひとりひとりが持つ障害特性をしっかりと把握し、たくさんコミュニケーションを取ることによって、人間関係の構築をしていくことがとても大事だと考えます。作業をする中で、お互いが衝突しそうになった時に、私が平等な立場で介入することによって、お互いの良さに気づき、気持ちよく作業できる環境を作っていくことを意識しています。
取材でお邪魔した時は、菓子折りに封をするシールを貼る作業を作業所の中で皆さんされていました。皆さんとても手際が良い。
利用者さんのバックグラウンドや障害の個人差をよく知り、理解することによって、どのようにサポートしたらいいのかを考えながら、利用者さんと接することを心掛けています。前職では『支援には答えがない』ということにたどりついておらず、こうしないといけない、こうでなければいけないということばかりが先行してしまっていたこともありました。その結果、押し付けのような形になってしまっており、それでは上手くサポートできないということに気づきました。試行錯誤を繰り返しながら、ひたむきに取り組むことが大事だと思います。
利用者さんたちには、『障害は不幸ではない』ということを実感して欲しいです。
障害を持っているということは、確かに時に不便で苦しい思いをすることもあるかもしれませんが、それは決して不幸なことではありません。誰かのサポートがあれば、乗り切れることも、どうしても悲観的に捉えてしまうことが多いので、利用者さん同士で揉めてしまった時は、ジャッジメントを一切なくして接することが、とても大事です。
このような愛の源泉は、私自身の子育ての経験からきています。子育てをしていく中で、『行動には必ず何かしらの動機がある』ということに気づきました。その過程で、怒ることと叱ること違いを学び、なぜその行為をしたのかという動機を聞くということを心がけたことが、この事業所で活かされていると感じます。
活動の中で、『絶対に可能性があると信じること』を大切にしています。
経営していく上で、自分自身のことを信じ抜くことをモットーに、心だけに従わず、色々な本を読み、色々な人の話を聞き、常に自分に軌道修正をかけていくことを意識しています。そして、自分が成長するためには、人とのご縁も重要であり、自分を正しく導いてくれる人を見極めるためには、まず自分自身が正しい行動をしていかなければいけないと思っています。
私の事業は、最初から順風満帆に進んでいったわけではありませんでした。
これまでを振り返ってみると、『決して諦めなかったこと』が成功の鍵となっているような気がします。自分の行動には責任を伴いたいという気持ち、そして諦めない気持ちが今の状況を作り上げたのではないかと思います。
今後の展望としては、『うちに来て、幸せだと思ってくれる人を増やしたいです。』
福祉事業だけにとどまらず、私が事業を行っていく中で苦労している法律の制度設計などにも携わってみたいと思っています。また、障害者の就労を増やすことはもちろん、APUの外国人留学生がもっと別府にとどまれるような企業誘致なども行ってみたいと考えています。
コロナ禍での不安な状況でさえも、これまで何度も乗り越えられてきた数々の危機を思い出すと、楽観的に捉えられるということで、失敗を繰り返しながらも強い精神力と諦めない心を常に持ちながら行動することで、成功していらっしゃるのだなというのがしみじみと伝わってきた杉本さんのインタビューでした。
障害者就労継続支援B型事業所スバルでは、障害を持った方のためのファーストステップの場として、就労支援を行っています。現在、利用者さんは20名程で、清掃や箱詰め作業、洗車やリサイクル事業など利用者さんの特性に合わせて様々な働き方が出来ます。
詳しい詳細については、ホームページやFacebookをチェックしてみてください!
SIC合同会社 / 障害者就労継続支援B型事業所 スバル
TEL:0977-76-8930 メール:t.sugimoto.5553@gmail.com
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インタビュアー:清水琴未(立命館アジア太平洋大学4年)
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