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別府にUターンした後継経営者2人の”美味しい”コラボレーション

別府にUターンした後継経営者2人の”美味しい”コラボレーション

2021.06.13

GENSENたち

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餅ヶ浜保育園園長の彌田昌克さん(写真左)と、南光物産株式会社の原口智成さん(写真右)


英語では、"break bread "という言葉があります。このフレーズには様々な意味があります。誰かと「break bread」することは、食事をしながら有意義な会話をしたり、誰かとつながったりする行為を意味します。また、人と人との間で何かを共有する社会的な相互作用を意味することもあり、それは食べ物、お金、アイデアなどです。「Breaking bread」は、私が今回インタビューする機会を得た2人の関係を完璧に表現しています。

私のように、ニュースを見たり、ツイートを見たり、記事を読んだりしている人は、新型コロナウィルスの影響で企業がいかにしてこの「新常識=ニューノーマル」に適応することを余儀なくされているか、また適応できなかった企業がいかにして閉鎖を余儀なくされているかを知っていると思います。私は先日、別府青年会議所のメンバーでもある2人のアトツギ(後継者)とZoomでニューノーマルにチャレンジしている様子などじっくり話を伺う機会を得ました。

別府にUターンした若き経営者たち

2人の後継経営者とは、原口智成さんと彌田昌克さん。2人とも30代の若き経営者です。

原口さんは、別府で菓子製造・卸の事業を営む南光物産株式会社の現社長で、「ざぼん*1」を使ったお菓子を製造しています。南光物産では一口サイズにカットして、砂糖漬けにした「ざぼん漬」を販売しており、店舗には、農林水産大臣賞を受賞した「ゆず一番(柚子ジャムのブッセケーキ)」や名誉総裁賞を受賞した「焼やせうま(きな粉と黒ごまの手焼きのせんべい)」などがたくさんあります。

*1 :「柑橘類の王様」と呼ばれる果物です。香りがとてもよく、やんわりとした甘酸っぱい風味が特徴。別府には市営のざぼん園があります

原口さんは、明治大学を卒業後、1年間のオーストラリア留学を経験し、イオングループで営業、物流、人事管理などの業務を経験してきたそうです。

本社に販売店を置く南光物産では、食品ロス削減に向けた活動を継続しています。

今回、餅ヶ浜保育園とコラボレーションして生まれた商品のひとつ「にんじんケーキ」。これ以外にほうれんそうケーキなども店頭で買うことができます。

彌田さんはお祖父様が創設された「餅ヶ浜保育園」の園長。原口さんと同様に、彌田さんは園長に就任する前、日本を代表するホテルで11年間勤務し、ホテルのIT部門やマネージャーとしてキャリアを積んできたそうです。

今回の取材は餅ヶ浜保育園で行いました。

別府の2代目・3代目と後を継ぐ経営者の皆さんは、原口さんや彌田さんと同じように、一度県外の大手企業でキャリアを積み、30代で地元別府に戻り、お父様から事業を引き継ぐケースが多いようです。

二人の出会いは、別府青年会議所(別府JC)の活動がきっかけでした。別府JCの上位組織である公益社団法人日本青年会議所は、日本国内の20歳から40歳までの起業家や専門家で構成された組織で、各市区町村の経営者たちが互いに切磋琢磨したり協力して街をよりよくする活動を推進しています。

コロナ時代、手を取り合いしなやかな企業を築く

今回のインタビューはZoomを利用して行いました。インタビュアーのThatoからの質問を真剣に聞いてくださいました。

 

Thato:新型コロナウィルスがお二人の経営する事業所に与えた影響について教えていただけますか?

原口さん:日本全国、そして別府市内の多くの企業がそうであるように、南光物産もCOVID-19の影響を強く受けました。南光物産の商品は、主に別府のお土産屋さんやホテルで販売されており、お客様の大半は別府を訪れる観光客です。その観光客が別府に来なくなってしまったので、お土産を買う人がいなくなり、弊社の商品はまったく売れなくなってしまいました。

Thato:別府は国際観光都市なので、コロナによる影響は特に大きかったですよね。

原口さん:はい。しかも、私が南光物産の社長に就任したのは、世界的な感染拡大が始まった2020年4月だったのです。同じころ緊急事態宣言が全国で発令されましたが、その時の会社の売上は90%も減少。お土産屋さんやホテルから、最大で1200万円相当の商品が返品されてきて、もう悲しいのかさみしいのかよくわからない感情で、涙もでてこない感じでした。でも、そこであきらめるわけにはいかない。私たち南光物産チームは、一部の商品を半額で販売したり、インターネットで購入できるようにするなどして、損失の回復に努めました。また、売れなかった商品は、廃棄するより市内の方々の喜びに繋がればという思いで、市内の事業所などに寄付をしたのです。

Thato:そのような取り組みをされていたのですね!食材が廃棄されることは心苦しいため、寄付は素晴らしい決断だったと思います。

彌田さん:ちょうど新聞かテレビのニュースで、南光物産さんが大変な状況になっていると知り、「うちの保育園と連携できることはないか?」と思い立ち、すぐに原口さんに連絡しました。土産物が余って困っている南光物産の商品を、子どもたちのためのおやつとして提供できないかと考え、そこから餅ヶ浜保育園とのコラボレーションがスタートしたのです。

COVID-19がもたらした試練に、南光物産はすぐに対応。同じ材料、同じ設備を使って、地元の人向けの「ほうれん草パン」や「チーズパン」などのパンを製造し、餅ヶ浜保育園をはじめとする別府地域の学校に提供したのです。南光物産は、一時期の苦境を乗り越え、GoToトラベルキャンペーンが活発だった時期に損失を前年対比20%の売上減にまで回復することができました。

2社のコラボレーションの様子は、大分経済新聞でも取り上げられました。(右から彌田さん、原口さん、南光物産の製造部・松尾さん)

また、2020年11月11日放送のOAB大分朝日放送「じもっと!OITA」でも特集され、大きな反響を呼びました。

Thato:南光物産と餅ヶ浜保育園のコラボレーションは、思いがけないものでしたが、本当に素晴らしいですね。お互いに普段取り組んでいることがベースにあり、何かあればすぐに声を掛け合える関係性というのは羨ましいです。

感じている課題と目指す先

彌田さんは続けて、今日々感じている課題についても話をしてくれました。

彌田さん:今回のコロナで、色々と学びや気づきがありました。別府の企業にとって観光キャンペーンがメリットがあったとしても、別府市や企業は、そのようなキャンペーンや政府の補助金に頼るだけでなく、利益を回復するための新しいアプローチを見つける必要があると考えています。また、別府は観光産業に大きく依存しているので、COVID-19の時期以外でも、別府の企業が自立できる方法を見つける必要があるのではないかと考えます。それが今回のコラボレーションのように、市内などの事業者なとタッグを組んで新たなチャレンジをすること等ではないかと思います。

Thato:別府のような観光都市にとって、「Go to トラベル」が停止されることは大きな痛手であることは事実ですが、より強い自立した都市を作るためには、この状況に適応する方法を考えなければならないですね。

原口さん:いま、彌田さんが話してくれたことは、弊社がすでに着手していることと繋がります。会社の設備などのリソースを活かし、売り先を別府に来る観光客向け主体ではなくニーズのある方に微調整し製品をオンラインでより入手しやすくしました。また、ウェブサイトをより使いやすくするために努力し、さらにTwitterやInstagramのアカウントを作成し、オンラインでの存在感を高めています。このようにして製品をローカル市場とオンライン市場の両方に適合させていっています。でも、まだまだできることはあるんじゃないかと思っていて、情報収集を怠らずにやっています。

 

ピンチをものともせず、知恵と工夫で窮地を乗り切る原口さん、そして経営されている保育園だけでなく別府全体の経済活動を冷静に分析する彌田さん。お話を聴いていてとても頼もしく感じました。

2人のビジネスマンは、自分たちがすでに持っているもの、声をかけられる人や資源について考える時間を持ち、新しいニーズを満たすことの重要性を実感したようです。お互いのコミュニティのために協力し合うことが、ビジネスが持続的に成功するために大切なことなのだと考えます。

編集後記

この2人の素晴らしいビジネスマンとの会話から最も学んだこと。それは、コミュニティとローカルエリアならではの友情関係がいかに大切であるかということです。別府の多くの企業が、COVID-19の影響を強く受けていますが、観光客が別府に来てくれないと成立しないビジネスをやっている業態は苦しい状況が続いています。今回のように、クリエイティブな発想で窮地を乗り切るコラボレーションは、会話と文字通りパンを分け合うことから始まりました。

あなたのGENSEN(源泉)は
何ですか?

原口さん:明るい未来をつくるための責任
彌田さん:ありとあらゆるものに可能性を見出す

WRITER

Thato Ramatseba

Thato Ramatseba(Thato)

南アフリカ

現在、週一度の料理の準備と配達サービスを始めようと活動中。目的は人々に世界の様々な地域の味を探求する機会を与えながら、健康的な家庭料理を手頃な価格でアクセスできるようにすること。

MESSAGE

別府では様々なバックグラウンドを持った人々が集まってコミュニティを形成しています。普段なかなか聞く機会のない多様な人々の声を聞いて広めたいです。書くこと、読むこと、分かち合うことはより良いコミュニティを築くための重要な要素であり、変革的な考え方を促し、考え方を変えるきっかけにもつながると考えます。

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