GENSEN

好奇心を湧かそう。

 
イノベーター湯 Vol.38 一色 翔太さん(結色)

イノベーター湯 Vol.38 一色 翔太さん(結色)

2022.01.06

GENSENたち

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別府には別府八湯がありますが、もう一つ隠された湯があります。湧き上がるアイデアを形にした起業家が集まる、その名も「イノベーター湯」。

 

第38湯目は結色(ゆいいろ)の一色翔太さん(いっしき・しょうた)さんにインタビューしました!

 

一色さんのこれまで

 

 介護福祉士として別府発達医療センターに勤めていた際、訪問介護のために地域を回っていた時期がありました。様々な家庭の子どもたちを見ていく中で、通常の福祉サービスでは制度上対応できない事例ががたくさんあって、そのことにより生活に行き詰まりを感じる子どもたちがたくさんいるなということを感じました。また福祉のサービスといっても利用者さんの生活上の困りの本質をくみ取ることができているのか疑問に思うことも多々ありました。そこで、地域という単位だからこそ出来る事が他にもあるのではないか、自分がその受け皿となって取り組んでみたい、と思った事が起業のきっかけです。

 

結色(ゆいいろ)とは?

 

 地域に強く根ざした会社をつくることを目的としていて、現在取り組んでいる福祉分野に限らず地域を盛り上げるプロジェクトを行なっています。

まず子ども達からフォローしていきたいと思い、現在、障がい福祉サービス(障がいのある子ども達の来る事業所)を提供する場として「むすびのば」と、民間学童である「ゆめのば」の2つを構えています。貧困層やひとり親の家庭がたくさんあることや、応援してくださる方々が近くにいることが決め手となりました。現在事業所として使用している物件は、倉庫として使われていた建物なのですが、職員と一緒に約3ヶ月かけてリノベーションしました。誰でも足を運びやすい癒しの空間をイメージしていて、温かい家庭を感じるような、家のようにくつろげる施設になっています。室内にはボルダリングやトランポリン、砂場があり、子どもたちが自由に考えながら遊ぶ事ができます。また土曜日にはみんなで遠足に出かけ、自然体験をすることもあります。

 私たちは子どもたちの可能性を大人が遮断しないこと、子ども自身の興味や自発的な行動を最大限尊重し、むやみに大人が介入することを避けるようにしています。子どもたちの行動に対しても決して否定せず、まずは考えさせること、そして見守ることで子どもたちは自らの経験として学ぶことができます。

 色々な背景を抱えた子が一緒に過ごしていますが、ここでは互いに助け合いながら過ごすことができていて、「結色に通い出して本当に変わった!」という保護者の声をよく聞きます。子ども達の吸収力、可能性は無限大だなということを感じています。

 

   

利用者さん、地域の方から頂いた本やおもちゃがたくさん

 

室内のボルダリングは子ども達に大人気

 

砂場は室内のあるため雨天時にも楽しめます

 

「ゆいんち」とは?

 キッチンカーを呼んで月に1度施設内で「ゆいんち」というイベントを開催しているのですが、福祉施設で定期的にイベントをしているところは通常あまり見かけないと思います。私たちは福祉の一般的なイメージのようなものを作りたくないという思いがあります。地域の方と交流をして、喜んでいただくためにイベントをやりたいと以前から考えていました。子どもからお年寄りまで楽しんでいただけるよう、キッチンカーの方にも味付けや価格設定でご相談するのですが、「こういう事がやりたかったんだよ!」と賛同してくださいます。地域があってこその福祉だと思っているので、地域の方との繋がりを増やすためにもこれからも工夫をして続けて行きたいです。


起業をする上での苦労

 この数ヶ月苦労の連続で地面を這いながらなんとか立ち上げたと言う感じです。ただ、気持ちはぶれなかったので「絶対に起業する!」という思いを胸に毎日進んできました。人との出会いに必然性を感じる日々で、人との出会いに支えられて今があります。また、地域の方々は子どもの声が聞こえてくること自体がが嬉しいと言ってくださいます。メディアに取り上げられる際も、ご近所である私どもの施設が注目されることをとても喜んで下さり「応援されているな!」と感じることができてとてもありがたいです。

 プロジェクトが徐々に形になってきた今も決して楽なことばかりではないですが、子どもたちの笑顔や成長が励みになって頑張ることができています。

 

将来展望

 今の子どもたちは親など大人が愛情をかけても、それを素直に受け取れずに行動や言葉で返してこない、ということが多いように感じます。例えば「ありがとう」というべき場面で「ありがとう」と言えなかったり、「ごめんなさい」という場面で「ごめんなさい」と言えない、ということなどです。これは掛け算と同じだと私は思っていて、どんなに私たちが数字の「9」を持っていても子供たちが「0」であれば「9×0=0」のままです。とにかく子ども達に数字の「1」だけでも持ってもらえるように、子どもの存在を認めて自己肯定感を高めていくことをしていきたいです。そうすれば、いつかは「9×9=81」という大きな数字=最大限の可能性を生みだすと確信しています。私は何かあったときに助け合う関係、人と人との繋がりで成り立っている関係こそが福祉だと思っています。私たちの考え方や活動が広まって欲しいと言う思いはありますが、専門性に特化した現在の型やサービスの質はぶらすことの無いようにしたいです。一人一人の子どもたちが子どもらしく、自らの個性を大事にして成長していくサポートを続けていきたいです。

 

事業概要

一般社団法人 結色

別府市立田町2-21

TEL 080-1798-8957

https://instagram.com/yuiiro531

 

インタビュアー 臼井 萌(大分大学理工学部創生工学科福祉メカトロニクスコース1年)

 

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