アメリカのシリコンバレーといえば、誰もが知っているビジネスエリア。一方の別府市も、多くの起業家を育てるために「ONE BEPPU DREAM AWARD」など、さまざまな取り組みが行われています。遠く離れたふたつの街がつながり、大学生が最先端ビジネスを体験できる企画が実現しました。
2022年1月11日〜3月20日にかけて開催された「別府×JAL スプリングチャレンジ2022 シリコンバレー流アントレプレナーシッププログラム シリコンバレー流ビジネスを体験する3ヶ月間(リンク:http://beppu-spring-valley.com/)」です。
日本航空株式会社、Skylight America Inc.、(一社)別府市B-biz LINKの3社共催。
3月4日~3月6日には、プログラムのコアとなる「別府市での現地フィールドワーク」と、各チームの企画案を発表する「ピッチ」が行われました。今回はその様子をリポートします。
「別府×JAL スプリングチャレンジ2022 シリコンバレー流アントレプレナーシッププログラム シリコンバレー流ビジネスを体験する3ヶ月間」。アントレプレナーシッププログラムとは、起業を実体験するプログラムです。
大分県別府市内外の学生が主体となり、新しい発想で地域の課題解決や活性化を目指し実施されました。シリコンバレーは、起業家やスタートアップを続々と輩出するエリア。学生たちは名だたる講師・メンター陣のもと、世界のビジネスを牽引するシリコンバレー流ビジネスを体験しました。
今回のテーマは、シリコンバレー発のスタートアップ「Miles(マイルズ)」の新規事業案を別府市との掛け合わせによって考えること。
【Miles(マイルズ) https://www.getmiles.com/jp 】
毎日の移動でマイルが貯まる、シリコン・バレー発のマイレージアプリ。貯めたアプリは商品や特典に交換する、抽選に応募する、寄付するなどができる。徒歩や自転車など、環境に優しい移動をするほど多くのマイルが貯まる仕組み。
大分県内在住の学生4名(立命館アジア太平洋大学、別府大学)、全国各地から14名(東京大学、東京外国語大学、慶応義塾大学、東京理科大学、上智大学、桃山学院大学、大阪府立大学、広島大学、宮崎大学など)、計18名の参加者が集まり、5つのチームに分かれてフィールドワークを行いました。
1日目は午後から集合。抗原検査とホテルへのチェックイン後、B-biz LINKに集合しました。
B-bizLinkの会場に集まる学生たち。
すでにオンラインでの面識があるので、みなさんリラックスした様子です。車座になり、会話も弾んでいる様子。
まずは運営メンバーの自己紹介からです。
続いて学生たちの自己紹介がありました。
自己紹介の後に取り組んだのは、チームビルディングです。各チームごとに話し合い、配られた紙をいかに高く積み上げるかを競う「ペーパータワー」を行いました。「30枚のA4用紙で、自立したタワーを立てる」というお題が出されました。作戦会議は7分、タワー作りは1分30秒の時間制限があります。
優勝は88cmのタワーを作ったチームに決定!対戦が終わった後は、振り返りを行います。
それぞれのチームが作戦内容と感想を発表しました。
「第1案が崩れたらすぐ第2案に移行する計画で、柱係と組み立て係を作り……と思ったけれど、柱を作り次第、柱を置いて土台を作る作戦に変わった」
「円柱や柱を作る、中に芯を入れたほうが強いと思ったけれどそうでもなかった」
「柱を作って土台を作って、それから……と思ったら時間がなかった」
「風の影響があった」
などなど。計画通りに進んだチーム、思わぬアクシデントがあったチーム、途中で計画を軌道修正するチームなどがありました。
発表が終わった後は、3分間、チームのメンバー全員をひとりずつ褒める時間です。ほめたり、拍手したり、褒められておじぎしたり。参加学生たちは、照れながらも嬉しそうな表情を浮かべていました。
「別府で感じるビジネスの息吹」と題した写真を3枚撮り、なぜその写真を選んだか3分以
内でプレゼンテーションするというお題がでました。各チーム、外に飛び出します。
各チームB-biz LINKの会場に戻り、チームごとに撮った写真をスライドに映し説明します。学生らしい視点で見た「別府」が映し出されて、ユニークな目線がたくさんありました。それぞれのチームで、新しい発見があったようです。
別府を歩きビジネスの種を探した後は、本田 俊介 氏(日本航空株式会社 執行役員 地域事業本部長)による基調講演「地域事業の取り組み」がありました。
今や日本、地域の課題である人口問題。この社会全体の課題に対しJALは「自分たちのできることをしよう」と動き出しました。そのためのポイントとなるのが日本の地域。飛行機を飛ばすだけでなく、新たな人やモノの流動を生み出し、需要自体を掘り起こして関係人口を作ることが地域事業のミッションだと言います。
そのためにJALは、ふるさとアンバサダーや地域本部スタッフの体制を整え、地域活性のためのプロジェクトを展開。観光では城泊、空き家民泊観光列車など、海外から人を呼ぶとともに地域の文化や伝統を守る取り組みをしています。物販ではふるさと納税や越境ECを展開。CO2対策や植林などSDGsに関する取り組みも積極的に取り入れ、自分たちにできることと社会問題をひもづけた活動を続けているそうです。また、JALの持つ「おもてなしのノウハウ」を日本各地に広める取り組みも進めています。
本田氏は「私たちの活動が、みなさんのヒントになれば嬉しいです。がんばってください」と、参加学生たちにエールを送りました。
講演後の質疑応答で「地域の人との交流、誰とかかわるか、どんなものを解決するかなどの
選定条件はありますか?」との質問を受けた本田氏。「条件はありませんが、本気で取り組んでいる人と関わることです。その人の大義や、その大義が地域や社会に貢献できることが大切。それを持っている人は間違いありません」と返答しました。
最後に全員で記念撮影。日本全国のみならず、世界的な活動をする上での考え方や計画方法など、貴重な話を聞ける機会となりました。
「BASARA HOUSE」のケータリングご飯で、学生・関係者入り混じってのマスク会食。
各チーム翌日の計画を立て、宿泊先の「ホテルニューツルタ」へと向かいました。これで1日目は終了です。
ミーティングが終了した学生たちに、今の気持ちを聞いてみました。
別府在住だけど新発見があったり、自分の住む街との違いに驚いたり、といった声があがりました。
暖かく快晴の2日目は、1日中チームごとのフィールドワークが行われました。別府を散策し、ビジネスのヒントを探ります。
チームごとに計画を立て、別府市内を巡った後は、明日に迫ったピッチの準備に取りかかります。
朝から活発に動き回るチーム、まずはプランの前提から見直し話し合いを始めるチーム、それぞれのチームが試行錯誤を重ねました。
朝からサイクリング(ひとりはランニング)、その後別府公園に移動したのは、チーム「コミュ力」。
青空の下、海苔巻きを頬張りつつ、歩きながら感じたことやメンバーのアイデアを話します。
観光名所「海地獄」もチェック。足湯にも浸かりました。
徒歩で移動し「地獄蒸し工房」で地獄蒸し体験。
食後は鉄輪の町を散策します。この後はバスで移動し「別府海浜砂湯」を見学、B-biz LINKに戻り明日へ向けたスライドづくりやまとめが行われました。
朝10時、ゆったりめに集合したのはチーム「肉食倶楽部」です。
ひとまず「観光名所を周る」という計画通り、まずは「海地獄」へ。地獄蒸し卵も、おいしくいただきました。
続いては「地獄蒸し工房鉄輪」で昼食。
先程のチームとは違い、こちらは一人一品方式で地獄蒸し料理を楽しんだようです。
それぞれのチームが、実際に別府を楽しみながら過ごした2日目の前半。地元住民にアンケートを取るチームも多くみられました。フィールドワークを終えてからは、翌日に控えたピッチのための準備で大忙し。作業は深夜、明け方まで続きました。
2日目に引き続き、よく晴れた3日目。
B-biz LINKの会場に集った学生たちは緊張のためか、寝不足のためか、若干ピリっとした様子。緊張感が漂っています。
司会はJALの現役客室乗務員で別府のAPU(立命館アジア太平洋大学)卒業生の杉田留奈さん。そしてB-biz LINKの小島健一さんのおふたり。会場には報道陣も多く集まり、前日までとは違う空気が流れているようです。まずは審査員の紹介から始まりました。
西畑 智博 氏(日本航空株式会社 常務執行役員 デジタルイノベーション本部長)
大塚智子 さん(B-biz LINK 地域ビジネスプロデュースチーム コーディネーター)
続いて、シリコンバレーにいる審査員のお二人。オンライン上で現地とつながり、リアルタイムで映像が映し出されました。
富永 生 氏(Rakuten USA Inc. Chief Executive Innovation Office Lead Principl:写真右)
籔本 祐介 氏(日本航空株式会社 事業創造戦略部 シリコンバレー投資戦略室 室長:写真左)
いよいよファイナルピッチのスタートです。学生たちの緊張は最高潮。チームの持ち時間は、ピッチが5分+質疑応答が10分です。スライドを使いながら発表し、審査員たちの質問に答えます。
トップバッターのチームは「コミュ力」
続いてのチームは「飲食店バイト」
3番目の発表は「VIVIDA」
4番目のチームは「肉食倶楽部」
最後の発表は「YOLO」
全員が発表を終えると、学生たちの表情は少しほぐれたように見えました。
5チームのピッチが終了する頃、シリコンバレーはすっかり日が暮れて夕方の景色に変わっていました。
西畑 智博 氏(日本航空株式会社 常務執行役員 デジタルイノベーション本部長)による講演、テーマは新規ビジネス創出に関して。これまでのJALのイノベーションの経験をもとに、個の力とリーダーシップについて熱く学生に語りかけます。学生からのするどい質問もあり、質疑応答も盛んに行われました。
小休止を挟み、各賞の発表です。
参加者間投票で最も多くの票を集めた参加者に贈られる「MVP」は、宍戸 美優さん。今回のプログラムのメンターである大山 哲生 氏(Skylight America Inc. CEO)より、別府ペア宿泊券が贈呈されました。
プログラム期間中、最も多くの移動距離をMiles App上で稼いだ参加者「ベストマイラー」は実島美羽さん。賞品はJAL3万マイルです。
プログラムに関する投稿で最も多くの “いいね” を集めた参加者「ベストインフルエンサー」は辰己 琴乃さん。JAL3万マイルがプレゼントされました。
そしてファイナルピッチで最も高い評価を受けたチームに贈られる「ベストビジネスプラン」に輝いたのは「飲食店バイト」の3名、金澤 諒さん、宍戸 美優さん、宇田川 あみさんです。
3名には、Skylight Americaによるビジネスアドバイザリー1年間無料支援(各自が起業時
2時間セッション × 12回)、そしてアーティスト・ジュンファントさんのイラストが贈呈されました。
西畑 智博 氏の閉会の挨拶で、ファイナルセッションは終了しました。
ファイナルセッションを終え、ランチタイム。
ファイナルピッチを終えた開放感からか、学生たちの表情はとても明るく、朗らかです。
「岡本屋売店」のランチボックス。
同じく「岡本屋売店」のカレー。デザートには、別府名物の「地獄蒸しプリン」が用意されました。
ランチの途中「NEW YORK CITY」ならぬ「NEW YOKU CITY」のパーカーを着た別府市長・長野恭紘 氏が登場。学生たちの輪の中に入り、質問に笑いを交えてトークが繰り広げられました。
学生から「2拠点生活するには、別府はいいなと思いました」と意見をもらうと、市長は「コロナで大変な目に遭ったけど、ワーケーションとか2拠点生活とかひょいとできるようになったよね。会社に行かなくてもできる仕事もあるし、会社のそばに住まなくてもいいなんてことが増えたよね」と返答。
他にも「なぜそんなにおもしろいんですか?」「出身校が廃校になってショックですが、学校の廃校や合併についてどう思いますか?」「市長をやめたらなにをしたいですか?」など、プライベートなことから政治の質問、教育問題まで、ざっくばらんに語り合う時間となりました。
市長との歓談の途中で、JALからのプレゼントを賭けたじゃんけん大会が開かれました。
プレゼント内容は、完売済みの希少な飛行機の模型、JALのマスコットぬいぐるみ、東京ディズニーランドとコラボしたトートバッグ、ストラップ。
市長とのじゃんけんで勝利した学生たちは、賞品を手に笑顔を見せました。
一段落ついたところで、市長から学生たちへの言葉。「これからも何かしら別府とのご縁をいただけたら嬉しい。『僕らの意志の外に答えがある』と思います。みなさん自由な発想で、限界にタッチしてみてください。またいつでも別府に来てください!」と力強く語りかけました。
市長を交えて記念撮影を行い、別府での3日間は終了。みなさん本当にお疲れ様でした!
プログラム終了後、学生たちに話を聞いてみました。「大変だったけど楽しかった」「ビジネス視点で別府を見ることができて、発見がいっぱいあった」「出会いと成長の場だった」「周りの人に助けられて終えられた、来てよかった」「帰るのがさみしい」「参加するか迷ったけれど、いろいろな挑戦がきて、貴重な経験になった」などなど、嬉しい感想がたくさんあり、実りある濃い3日間だったようです。
運営スタッフや審査員たちからは「学生たちの発想力と行動力には、驚かされる」「自分が学生だったら参加したかった」との意見が多く聞かれました。
日本全国の意欲的な学生が集まり、ビジネスを実体験できる貴重なプログラム。もしもあなたが学生だったら、ぜひ来年のプログラムに参加してくださいね。きっとこれまでにない経験と仲間が待っていますよ。
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