別府には別府八湯がありますが、もう一つ隠された湯があります。湧き上がるアイデアを形にした起業家が集まる、その名も「イノベーター湯」。
第31湯目は、梅本弥生さん(一般社団法人 デザイナーズカンパニー Y.H2020)です。
私は別府大学短期大学部に在学中、今のY.H2所在地である「喫茶くれよん」でアルバイトをしていました。喫茶くれよんにはギャラリーが併設されていたため、それを機に私も作家活動をはじめました。その後は就職をしましたが、36歳のときに当時の仕事をやめ、別府大学文学部芸術文化学科に3年次編入をしました。在学中には中高の美術教員免許を取得し、卒業後、絵画教室「梅本美術研究所」を始めました。
知的障がいの姉がいるので、幼い頃から親に「姉ちゃんを任せるぞ」と言われていました。ですが実際家族だけで抱え込むのは難しく、世の中と繋がる大切さを身をもって実感していました。そこで、就労継続支援B型施設を作れば姉の居場所ができ、さらに自分と同じように障がい者をもつご家族が「一人で抱え込まない」場所を作ることができると考えました。
Y.H2には梅本美術研究所の「障がい児コース」に通った方々が、高校を卒業後、エスカレーター式にY.H2に就職しています。梅本美術研究所で保育園の絵画教室講師をしているのですが、そこで使う工作キットづくりをしています。今はひなまつりのキットづくりをしています。このように、梅本美術研究所の事業をY.H2に請け負ってもらうことで、工賃を生み出すことができています。
「自由」ですね。Y.H2のメンバーをはじめ、全ての人に自由であってほしいと思っています。障がいを持った方々のそれぞれの特性を理解しながら、汲み取りながら、そしてご家族や仲間と話し合いながら、メンバーさんが自由でいられるようにサポートしています。また、メンバーさんがY.H2に来ている間はそのご家族が自由でいられたらなと思っています。
障がいをもつメンバーの制作過程を梅本さんから丁寧に教えていただきました
これから、よりY.H2で「アート」を販売していくために、株式会社naNkaを設立しました。ビジネスとして成立させ、メンバーさんの工賃を上げていくことを目指しています。Y.H2とnaNkaの関係性を例えると、Y.H2は「魚・肉・野菜などの素材づくりをする場」で、naNkaは「その素材を使って料理する場所」といったイメージです。第一弾として、アートマスクケースを制作しました。別府の街をテーマにnaNkaのアーティストたちそれぞれの作品を作り、それをデザイナーさんに組み合わせてもらい、商品として展開しています。また、現在は大分の第一調剤薬局様からご依頼をいただき、キリンのオブジェを制作しています。
アートマスクケースをいくつか見せていただきました
こちらの原画を手に取りやすいデザインしています
現在Y.H2のスタッフが海外で活動しているので、別府にいながらY.H2の活動を世界に知ってもらい、ワールドワイドに活躍できたらいいですね。
例えばY.H2が海外で作品展をしたら、「別府にそんなところがあったんだ」と別府の人も受け止めやすいですよね。地場である別府でも、世界でも、同時進行で頑張ればいろんな方がY.H2の活動を見に来てくれて、観光にも役立てるのではないかなと思っています。そうすればごく自然に、別府はアートの街、福祉の街になれるのではないでしょうか。芸術がもっと根付き、芸術文化の豊さに気づく人が増えればいいですね。さらに、naNkaでは他の事業所で絵を描いている方をピックアップして、作品を商品化する仕組み作りをしていきたいと思っています。
一般社団法人 デザイナーズカンパニー Y.H2020
別府市扇山2-1
TEL 0977-85-7100
Web https://yh2.or.jp/
Instagram https://www.instagram.com/yh2.020/
Facebook https://www.facebook.com/designerscompanyy.h2020
梅本美術研究所
別府市扇山2-1
Web https://umemotoartschool.com/
Facebook https://www.facebook.com/umemotoartschool/
株式会社naNka
別府市大字鶴見4548番地の1128
Web https://nanka.jp/
Facebook https://www.facebook.com/nanka2020
インタビュアー:大迫弓菜(大分県立芸術文化短期大学専攻科)