GENSEN

好奇心を湧かそう。

 
イノベーター湯 Vol.35 加世田 国与士 さん(うちらぼ)

イノベーター湯 Vol.35 加世田 国与士 さん(うちらぼ)

2021.09.05

GENSENたち

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別府には別府八湯がありますが、もう一つ隠された湯があります。湧き上がるアイデアを形にした起業家が集まる、その名も「イノベーター湯」。

第35湯目は「うちらぼ」の代表、加世田 国与士(かせだ・くによし)さんにインタビューしました!

  

加世田国与士さん(写真右)と奥様の千絵さん(写真左)。今年6月に生まれたばかりの娘さんもともに。奥さんの千絵さんも身近なものを題材として子供たちのワクワクを刺激するような実験教室をされています。

 

                                                     

加世田さんのこれまで

「 私は元々教師になりたくて教師になる以外の進路は全く考えていませんでした。大学からの説明をきちんと受けたうえで大学に進学したのですが、進学先の大学の学部で教職免許が取れないことを入学後に知り愕然としました。とても落ち込み、一度は再入学や他大学に編入をすることも考えましたが、大学での大好きな友人と離れたくなかったですし、学年が上がるにつれて専門的な内容に興味をもつようになり、研究者の道に進むことを決めました。」

 

友人の死

「研究者として歩む大きなきっかけとなったのは同じ大学院で研究者を目指していた友人の早すぎる死です。研究一本でいこうと決断してからは、その友人の生きたかった分も自分自身が生きたいと思い、必死で研究に打ち込みました。」

 

 

加世田さんはその後、世界最先端の研究機関(国立研究開発法人産業技術総合研究所、英国のマリーキュリー研究所)での勤務を経て、別府市のサラビオ温泉微生物研究所 (旧:サラヴィオ化粧品)で研究所所長を務め、これまで約30年にわたって国際的に活躍してこられました。 

 

加世田さんはなぜ「うちらぼ」を立ち上げることを決意したのでしょうか?

「研究で歴史を刻み科学を発展させることで社会に貢献できますが、生きている間にもっと直接的に貢献したいという思い、そして元々教師になりたかったことから「生きる力」を育む場所を作りたいという思いが常にありました。決定的な理由はコロナです。コロナ禍の中、苦しみながらも立ち向かう子どもたちの姿を見て「今やるしかない」と決断しました。」

 

うちらぼとは?

「 江戸時代の寺子屋は勉強をするための場ではなく生きるための学びをする場だったんです。うちらぼとはウチに開設したラボで「生きる力」を養う場所です。いわば『現代の寺子屋』だと私は位置付けています。理科(サイエンス)、英語を中心に社会に通じる体験型の学びを積み重ねます。

 科学は問題を自分で見つけ出す力、解決方法を探る力、実行する力、考察する力、それを踏まえて次の課題に取り組む力を必要とするので生きるツールになるのです。英語が出来れば国際的に通用します。科学と英語が出来れば十分生き抜くことが出来ます。私にとっての教育は「共育」であり一方的に教えるというのではなく、相手に寄り添いながら自分も学ぶことです。うちらぼは、きっかけと環境づくりによって「ヒラメキをカタチに変える」取り組みを進めています。そして、どの世代の方がお見えになっても「自由な学び」を尊重します。興味のある方全員ウェルカムです。」

 

加世田さんの考える科学の面白さとは?

「サイエンスにおいて、世界中の誰もが解らなかったものを『解明した!』というときには何が起こるでしょう? 解明した時は世界一になれるのです。私は過去に世界中の研究者が分からなかったキネシン(※1)というタンパク質が細胞の中でまるで人のように「二足歩行」していることを突き止めました。約4年間研究していたのですが、研究し続けてきた結果が、『これからスライドガラスに滴下するこのピペットからの一滴でわかる!!』という時の興奮と言ったら手が震えて実験できないほどです。仮説通りの結果がモニターに表示されたときは時間が止まりました。研究者としてこれ以上の喜びはないです。」

※1 キネシン(英語: Kinesin)とは、真核生物の細胞質中に含まれるモータータンパク質の一種

 

「身の周りにあることでも『何?』『なぜ?』を突き詰めることが出来ればブレイクスルーにつながり、 一番になれます。きっかけを与えて、小さなことでもいいので成功体験を繰り返す。そうすると自己肯定感が育まれます。これからの社会で必要な”自分で切り拓いていく力”も科学で身につきます。わからないことをわかる喜び、新しいことを発見する喜びが科学にはあります。」

 

将来展望

 「大分県は科学に力を入れていて『大分県からノーベル賞科学者を』というのが目標になっていますが、私が生きている間に大分県からノーベル賞が出るように尽力します。親御さんも含めて子どもたちとたくさん交流をしていきたいです。その傍らで研究開発と経営に関する経験を活かして事業者さんと共同研究、共同開発をすることで、子どもたちにも大人の姿を見せたいと思います。

 研究に使う道具は個人で買うのには本当に高価なのですが、このラボを開くにあたってたくさんの方に支援していただき本当に感謝しています。いただいた物にはすべて、寄贈してくださった方のお名前、日付を書いています。宝物であり命です。絶対に恩返しをしたいと思っています。

このラボを手始めとして、さらに大きな研究所を作り”生きる力”を学べる取り組みを進めたいたいという思いが湧いてきます。死ぬまで研究も続けていきたいです。」

事業概要

うちらぼ

大分県別府市堀田5組

Tel 050-7119-6904

URL: https://uchilab.webnode.jp/

 

 

インタビュアー:臼井 萌(大分大学理工学部創生工学科福祉メカトロニクスコース1年)

 

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