自給自足の生活や、自分で野菜を育てて暮らすような生活に憧れたことはありますか?
もしかすると、みなさんが想像しているよりも、ずっと大変かもしれません。それでも、そのような生活を選ぶとしたら、理由は一体何でしょう?
土を触る楽しさ、近所の人におすそ分けする時の会話、鳥の声、川の冷たさ、自然の移ろい。思うようにいかないことが面白い? いや、自然を前に、「思うようにする」と考えること自体が違っているのかもしれません。
「ゆっくりと、その土地の人と生きていく」。
この記事は、そんなことを教えてくれた国際学生たちの話です。
農業分野で使用されている化学物質の使用量を減らして、持続可能な農業を目指すため、別府の留学生が立ち上げた「別府グローバルガーデン(Beppu Global Garden)」というプロジェクトがあります。
「実は子供の頃から、環境問題にずっと関心がありました」
「誰も気にかけなかったら、未来の世代の生活はどうなってしまうの?そのような思いでプロジェクトに参加しました」
彼女たちは、情熱に満ちた目で生き生きと語ってくれました。
サスティナブルって、なぜ今、注目されているの?
・「サスティナビリティ(Sustainability)」とは、物事の「持続可能性」、つまり「将来に渡って機能を失わずに続けていくことができることシステムやプロセス」のこと。
・農業分野では、世界の人口増加に伴って主流となった工業化農業(短時間で大量の食料を生産できる手法)に警笛を鳴らす動きが高まってきている。
・近年、次々と発生する異常気象による自然災害。若年層を中心に、農地や海を使い捨てにせず、環境への影響を最小限に留めるよう、産業やビジネス、暮らしの在り方を見直す運動が広まっている。
多様な文化と国から集まったメンバーにとって、サスティナブルの正解なんてない。でも、向かうべきゴールは見えている。今やらずに、どうするの?
この団体の目的は、地元の人々や農家と一緒に持続可能な農業を実験できるスペースを作ることであり、それによって地域の環境と文化に関する現状の認識を広めること。“Beppu Global Garden”(BGG)は、まさに彼らの「実験ラボ」なのです。
BGGは、早速地元の農家さんたちに相談し、地域の人や学生たちを招いたイベントやワークショップ活動を次々と実施していきます。
特に人気があったのが、「コンポストトイレ」のワークショップ。名前は聞いたことある、という人もいるかもしれません。実は、環境に良いだけでなく、災害時にもとっても役立つ優れものなのです。
コンポストトイレって、どんなもの?
・菌類と細菌の助けを借り、生物学的プロセスを通じて排泄物を処理するトイレ。
・有機物と一緒に分解するため、廃棄物を洗い流す際に電気と水を必要としない。
・掃除が簡単(1〜2か月ごとにコンポストトレイを交換するだけ)
・そのため、災害時だけでなく、トイレのない場所でのキャンプにも役立つ。
BGGは、知見者を招いて、コンポストトイレのワークショップを開催。個人でやってみるとハードルが高そうなコンポスト作りも、地域の人たちと「こうやってみようよ」「堆肥は庭にも撒けるのよ」など、会話を楽しみながら行いました。BGGメンバーもまた、このワークショップによって、地元の人たちに顔を覚えてもらうきっかけができたようです。
皆さんの地域には、蛍がいる自然は、どれくらい残っていますか?私たちには、誰しも、故郷、または思い出深い場所があると思います。留学生たちにとって、それは生まれ育った国であり、この別府の土地でもあります。
BGGは、ビーチや川の清掃などの大規模なイベントを、毎月1回、地元の人々の協力を得て開催。
「自分たちだけの活動にせず、地元の人たちと共に、美しい自然を残したい」
清掃活動を続けることで、別府のホタルの生息地を保護しているのです。
「別府は都市と自然が融合した場所です。多くの自然は今も残っていて、川の清掃などのイベントを開催するたびにたくさんの地元の人々が参加してくれて、とても感謝しています。」ベトナム出身のNhiはいいます。
そうした活動を続けていると、最初は戸惑っていた地元の方々も、少しずつ心を開いてくれ、「これ使っていいぞ」「こうするんだよ」などと声をかけてくれるようになってきました。自分たちだけで畑を作って、この実験ラボを運営することは難しくなかったかもしれません。しかし、それではこの関係性は得られなかったでしょう。
日本語は、正直たどたどしいかもしれない。でも、自分から動き出せば地元の人たちは受け止めてくれる。「留学生」という総称ではなく、ひとりの想いを持った人間として、とても嬉しかったといいます。
Covid-19の状況下で、BGGメンバーも不安があったはず。実際、別府では、アルバイトの機会を失った学生たちが、食べ物を買うお金もなく困っている状況がありました。そこでBGGは、農場で収穫したじゃがいもを困窮している学生に寄附する活動を行いました。地元の人々が提供してくださった大学近くの土地で普段からオーガニック野菜を育てていることが、支援に繋がったのです。目の前で、誰かを助けられたという達成感が、彼らをまた支えたことでしょう。
「今後この活動により多くの人が参加し、サスティナブルな暮らしに関心を持ってくれれば嬉しいです。別府から日本に広げたいですね」と、インドネシアのEvitaは話します。
Nhiは、「BGGがなくなったとしても、私たちの世代が地域の中で使い捨てのない暮らしを選ぶことができたなら、それが一番」とまっすぐな笑顔で伝えてくれました。
BGGは、環境を守るため、そして人の心を湧き立たせる数多くの活動を行っています。彼らが作ったものや活動が、地域社会と環境にどんなに貢献したことだろうと思います。最も印象的なのは、APUHands(新型コロナウイルスの影響で困窮する学生を支援する団体)にじゃがいもを寄附したというエピソード。学生である当人たちにとっても厳しい状況の中で、メンバーを動かしたのは「友達を助けたい」という心だったのです。インタビューは、学ぶことも多く、楽しく興味深いものでした。
私も、新型コロナウイルス終息後にはBGGの活動に参加してみようと思います。活動について話している時のメンバーの表情や、活動写真の笑顔から、彼らが心から楽しんでいることが伝わります。
「環境保全って大変そう」と感じている人もいるかもしれません。でも、きっと誰かと一緒であれば、気軽に楽しいものになるでしょう。
何か動き出したい、と心では思っているけれど、なかなか動き出せていないという人は、ご家族やお友達を誘ってBGGの活動に参加してみてはいかがでしょうか。
参照
Microorganisms to Bring about a Change in Japanese Agriculture, Beginning with the soil |Food. (n.d.). RADIANT- Ritsumeikan University Research Report. Retrieved September 9,2020, from https:// www.ritsumei.ac.jp/research/radiant/eng/gastronomy/story5.html/
What Is Sustainable Agriculture?-Definition, Benefits and Issues- Video & Lesson Transcript| Study.com.(2019). Study.Com. Retrieved September 9,2020, from
https://study.com/academy/lesson/what-is-sustainable-agriculture-definition-benefits-and-issues.html
大学では「よっしゃこい」に所属している。趣味は写真を撮ったり、楽器を演奏したり、日本各地を旅行したりすること。