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ミレニアル世代が描く”三方良し”のビジネス 

ミレニアル世代が描く”三方良し”のビジネス 

~日本とインドをつなぐ若手ベンチャーの見る世界とは〜

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起業家にとってゴールとは何だろうか?新規株式公開(IPO)、M&Aによる事業売却、地位や名声。いろいろなゴールがあるはずだ。しかし、従来の考え方とは異なるゴールをイメージする地方発の新進気鋭のベンチャー企業がある。株式会社JIITAK(ジータック)だ。

 JIITAK共同創業者の小林夢輝氏(左)と、ジョセフ・カナプリー氏(右)

在学中の起業アイデアが3人を引き合わせた

JIITAKは2019年6月に創業。大分県別府市にオフィスを構え、ソフトウェア受託開発事業やクラウド型の自社サービスを開発・運用しているIT企業だ。共同創業者は3人。東京都出身の学生起業家である小林夢輝(こばやし・ゆうき)氏、インド出身エンジニアのジョセフ・カナプリー氏、インド出身のノエル・マーティン氏である。起業家精神を持った3人は大学時代に時を同じくして出会い、起業に至った。


左から、小林氏、ノエル氏、ジョセフ氏。ここからJIITAKの航海が始まった。


JIITAKはこれまでに、薬剤師と薬局のマッチングサービスである『ふぁーまっち』、大学のお昼時間に大混雑する食堂で快適に食事が取れない・授業に遅れるという問題を解決する大学専用のフードデリバリーアプリ『ワセデリ』などのサービスをリリース。
創業1年ながら、着実に成長している期待の新星だ。

彼らはどんな想いのもとにサービス開発を手掛けているのだろうか。疑問に思った私は、開発にかける想いを聞いてみた。

ただ依頼されたシステムを開発するのではなく、そのサービスが本当に取引先にとって有益なシステムなのか、また社会の課題解決・ニーズを満たすものとなるのかを重視しています。」そう語るのはインド出身の共同創業者であるジョセフ氏だ。

共同創業者の小林氏も同じ想いを持っている。「僕たちの価値は、取引先のお客さまをハッピーにすることに加え、サービスを実際に使うエンドユーザーが喜んでくれること。その喜びを追求することが僕たちの楽しみです。」

 

効率的なリソースの活用ができるからレスポンスが早い!

JIITAKは日本で企画、デザイン、設計を行い、パートナーのインド開発ベンダーで共同開発を行なっている。日本とインドの2拠点開発という独自のスタイルが特徴的だ。

JIITAKの強みは開発スピードと質の高さにある。冒頭で述べた通り、JIITAKは日本でクライアントの開発要件をまとめ、インドで開発を行っている。この点について、取引先である日本企業はどう感じているのだろうか?

「納品後はお客さまから感想をいただくのですが、最初の打ち合わせ時点で自分たちはインドと共同開発チームを組んで開発業務を行う旨を伝えているので、国を越えた開発について不安の声を聞いたことはほとんどありませんでした。それ以上に、開発スピードが早く、進捗状況もこまめに報告してくれた、気軽に相談がしやすいのでとても満足している、という声をいただきます。」


インドのオフィスには鳥居と日本庭園がある。精神的にも架け橋でありたいというJIITAKの想いが伝わる。

 

JIITAKは、アプリケーションやシステムなどの開発業務を海外IT企業と共同で行うオフショア開発」を取り入れている。オフショア開発は、費用削減を期待できる一方、海外の開発者とのコミュニケーション不足などが原因で、品質低下や納期遅れなどの問題が発生するリスクもある。

しかし、JIITAKは提携先企業とのコミュニケーションの質を高めることで、これらの問題を解決している。

「日本では海外の取引先とのコミュニケーションに問題を抱えることもあり、オフショア開発を懸念する声もありました。しかし、僕たちのチームは、開発工程を丸投げなどはせず、日本の大学・大学院を卒業した現地出身者が提携先企業を選定し、円滑で理解不一致のないコミュニケーションを一貫して取れることを強みとしています。僕たちは従来のオフショア問題を解決し、お客さんへの素早い対応と質の高さで勝負しています」と小林氏は述べる。

 

良いものは情熱と信頼関係から生まれる

私が今回のインタビューで印象的だったのは、ジョセフ氏の笑顔だ。エンジニアとして活躍する彼は、非常に明るく気さくな人柄の持ち主である。ジョセフ氏は日本語を得意としている訳ではないが、これまでに多くの人々を惹きつけ、関係性を築いていることに注目した。

人懐っこい笑顔で微笑むジョセフ氏

 

何がそれを可能にしているのか、ジョセフ氏に尋ねてみた。

「相手との関係構築で大切なことは、パッションを持つことです。いかにパッションを持ち相手の心を開けるかというのは言語以上に重要なことです。もちろん言語を流暢に使いこなすことは相手をより深く知るために大切です。しかし、言語が全てではありません。パッションを持って堂々と相手に話しかければ、たとえ単語や文法が正しくなくても相手はあなたが伝えようとしていることを必死に理解しようとしてくれます。」

言語よりもパッションを大切にー。ジョセフ氏の言葉には熱意がこもる。

異国の地でのビジネスにおいて、ジョセフ氏のように相手と信頼関係を築くためには具体的にどうすればいいのだろうか?

「私がいつも大事にしていることは人を区別しないことです。誰とコミュニケーションをするにしても、隔たりなく接するようにしています。相手から何かをもらったら、自分も相手に対してできることをする。情報をシェアしたり、相手の困りごとを聞いて解決のために行動したりしています。常に与え合う心を持つことが、人との出会いにおいて良い運を引き寄せるコツです。」

最大の魅力はコミュニケーションにあった!

インドの共通の友人の結婚式にて。インドと日本を行き来して語り合った日々がまた訪れますように。


小林氏はジョセフ氏についてこのように話す。

「日本人同士でビジネスのやりとりをする場合、先入観で『こういう人はなんとなく◯◯な感じかなと察しがちかと思います。ですが、ジョセフの場合はそういった偏見や先入観がない。だからこそ、誰に対しても平等にコミュニケーションすることができていると感じています。」

日本人同士のコミュニケーションは一見するとスムーズかもしれないが、そこで無意識に生じている先入観がコミュニケーションの不足や勘違い、トラブルのもとになることもある。言語の「壁」があるからこそ、それを乗り越えようとする謙虚さやエネルギーが生まれ、相手にも伝わると思う。

ジョセフ氏のそのような姿勢が周囲を「応援したい」という気持ちにさせるのではないだろうか。その結果が、ネットワークを広げるきっかけに繋がっているのだろう。思いやパッションに「壁」はないのだ。


笑顔に秘められた苦悩の数々

言ってみれば人の懐に入るのがとても上手なジョセフ氏。だが、起業当初は日本企業とビジネスをする上で苦労もあったと言う。

「僕にとって一番苦労したのは、取引先と信頼関係を築くことでした。日本でビジネスをする際は特にこの点を意識しないといけない。

相手と心を通わせるには多くの時間を要します。しかし、信頼関係がしっかりと築けると次のステップへスムーズに移ることができる。日本や他国でのビジネスを考えたとき、信頼という考え方はとても重要であると気付きました。製品開発も同様で、はじめは良いサービスを作っても取引先の顧客に対してきちんと受け入れられるまで時間がかかる。ビジネスをしていく上で、やはり何よりも信頼が大切です。」

日本でのビジネスを目指す海外のビジネスマンに向けて

最後に、コロナ禍の中、現在も日本で活動を続けるジョセフ氏に、これから日本でビジネスを目指す海外の方に向けてのアドバイスを伺った。

「私がこれまでの経験から感じたのは、日本にはチャンスが非常に多いということです。日本企業は多様な価値観や考えを持っている人々とともにビジネスをしようと望んでいます。チャレンジ精神を胸に秘め、ぜひ積極的に挑戦してほしいです。その際にキーワードになるのはパッションと信頼です。」

自分に正直な気持ちでまっすぐに物事を捉え、芯のぶれない姿勢でインタビューに答えてくれたジョセフ氏。彼の言葉は日本での挑戦を志す者にとって、自分の道を一歩切り拓くきっかけとなるのではないだろうか。

編集後記

今回は、湯のまち別府を舞台に独自のスタイルで成長を続けるベンチャー企業、JIITAKのお2人にお話を伺うことができました。人との繋がり、信頼、そしてパッションを胸に、私も新たなことにチャレンジし続けていきたいです。小林さん、ジョセフさん、貴重なお話ありがとうございました!

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About

株式会社JIITAK
http://www.jiitak.jp/
https://www.facebook.com/jiitak.inc
info@jiitak.jp

WRITER

宇都宮 大志

宇都宮 大志(タイシ)

日本

別府市出身。地元の地域活性化を目指し、観光促進・まちづくりに励む。大学2年次にアメリカ・サンフランシスコへ留学。世界トップのIT企業であるGAFAMの本社へオフィス訪問し、現地社員にインタビューを実施。現在は、企業ホームページ制作・ブログ発信・地域密着型テイクアウトアプリの開発などを手がける。

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地元別府市で育つこと21年。別府のまち全体に根付く温泉地ならではの人々の温もり、多様性、ジェンダーの垣根を超えた共生社会など、あらゆる視点から別府のリアルな姿を発信していきたいと思います。

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