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「宇宙ビジネス」は他人事じゃない!民間企業&地元住民こそ参入すべき理由│宇宙ビジネスワークショップレポート

「宇宙ビジネス」は他人事じゃない!民間企業&地元住民こそ参入すべき理由│宇宙ビジネスワークショップレポート

2021.08.11

プロジェクト

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©2020 canaria, dentsu, noiz, Space Port Japan Association. SPJが打ち出したスペースポートシティ構想図

「大分空港がスペースポート(宇宙港)になる!」とのニュースに驚くまもなく、早ければ2022年には小型衛星の打ち上げが予定されている大分空港。「宇宙」と聞けば、大人も子供もワクワクと心が踊り、期待感が膨らみます。

宇宙への夢や空想は広がるものの、「スペースポート」が実際どんな影響を自分に与えるのか?自身がどんな関わりを持てるのか?という点に関しては、今いちピンと来ない人も多いのではないでしょうか。

“もっと多くの人に宇宙を身近に感じてほしい” そんな思いから、宇宙に関わるビジネスを通して、ワクワクする未来と可能性を考える講演とワークショップが開催されました。

「他人事」ではもったいない!宇宙ビジネスの全体像と可能性

「宇宙ビジネスと言われてもピンと来ないし、想像もつかない」

「話が大きすぎて、ポカーンとしてしまう」

「興味はあるし参入したいけれど、取っ掛かりがわからない」

そんな宇宙ビジネス初心者の参加者に向け、「大分から宇宙へ 〜世界の宇宙港の最新情報とスペースポートシティ構想〜」と題した講演がありました。

講師:青木 英剛

一般社団法人スペースポートジャパン(以下、SPJ)共同創業者&理事/宇宙エバンジェリスト

過去に宇宙ステーション補給機「こうのとり」の設計に携わる。宇宙ビジネス参入や政府・JAXAの委員など数多くの宇宙事業に関わっている。

 

成長期まっただ中の「宇宙ビジネス」は44兆円規模の市場

宇宙ビジネスの市場規模は現在、約44兆円。2030年〜2040年に向けて、予測では147兆円まで成長すると言われています。

宇宙ビジネスのトレンドは大きく分けて「宇宙ビックデータ」「宇宙インターネット」「宇宙旅行」「惑星探査」の4つ。今後10年間、これらは非常に注目されている領域です。

特に「宇宙ビッグデータ」は、宇宙から地球見て得られるデータのこと。農業・漁業をはじめ医療・流通・防災まで幅広く役立てられるため、これから最も必要とされる分野だといわれています。

2021年7月10日にはヴァージン・ギャラクティックによる有人の宇宙飛行が成功。「宇宙旅行」「惑星探査」は、すでに夢物語ではありません。

宇宙産業の主役は官から民へ

宇宙開発には、大企業の関わりが必要だ」と熱く語る青木氏。

SPJは「日本にスペースポートを創りたい」との想いを持って設立された団体で、ビジネスの創出、企業連携などを推進中。

大分県・国東市のほかにも、北海道・大樹町、和歌山県・串本町、沖縄県・下地島の民間企業が趣旨に賛同し参加しています。

世界のスペースポート事情

スペースポートとは、宇宙に飛び立つための港のこと。宇宙港宇宙基地です。

宇宙といえば垂直に飛び立つロケットをイメージする人も多いかもしれません。しかし大分では、真上にロケットを飛ばすのは難しい環境。そこで、飛行機のように離着陸する機体の発着を予定しています。

大分空港と同様に、世界中でスペースポートの検討が進んでいます。アメリカをはじめ、ブラジル、エクアドル、ポルトガル、イタリア、イギリスなど。2021年7月6日には、韓国のチェジュ島でのスペースポート計画が発表されました。

世界中で、スペースポートだけを目的として作られたのは「スペースポートアメリカ」1ヵ所のみ。約300億円を投資されたこの施設があるのは、なんと砂漠のど真ん中です。アクセスが大変で、普通の人はたどり着くのも困難。日本には、日本にあったスペースポートのかたちがあるのでは、と青木氏は言います。

大分空港がスペースポートに選ばれたのは「適度な余裕と地元の受け入れ体制」のおかげ

スペースポートの候補地となるために、必要な条件は「①十分な長さの滑走路と設備」「②宇宙行きフライトの就航が可能」「③地元が受け入れてくれる」の3つです。

②は程よく余裕があり、そこそこ人気がある、適度な塩梅の地方空港が理想的。ANAとVirgin Orbit社とで協議した結果、大分空港が最適との結果になりました。

大分は、地元の方々が受け入れてくれる状況。大分は昔から海外の人を多く受け入れてきており、寛容なマインドがあるからかもしれない」と青木氏は分析します。

ある国では、住民から宇宙港への反対が強く断念したという話もあるそう。地元住民の協力なしに「スペースポートシティ」構想は成り立たないのです。

誰もが「宇宙旅行」に行ける時代は、もうすぐそこ

2020〜2021年は「商業宇宙飛行」元年といわれています。

約2700万円の宇宙へのチケットは、すでに600名以上が申し込み済み。フライトの順は今後くじ引きで決まりますが、最初の100人の中に2名の日本人がいます。ふたりとも16年前にチケットを購入し、16年もの間宇宙へ旅立つ日を待っている状態。二人とも一般人です。ごく普通の人が、すでに宇宙行きのチケットを手にしていると考えると……ずいぶん宇宙旅行が身近に感じられます。

50年前、ハワイツアーは400万円でした。高額にもかかわらず、当時、旅行者は急増。宇宙旅行も同じように、15〜20年後には数百万円まで下がるだろうと予測されています。「車を買うか、宇宙旅行へ行くか?」そんな選択に迫られるときが、すぐそこまで来ているのです。

スペースポートは“みんな”で創るもの

SPJは2020年6月に「スペースポートシティ」構想を発表しました。

※詳しくはこちら https://www.spaceport-japan.org/concept

スペースポートはただ作って終わりではなく、周辺住民の理解を得て、周辺開発を同時進行する必要があります。市民の方々が参加して実現されていくものです。

青木氏は「大分が培ってきた“受け入れマインド”をもとに、日本全国の企業のみなさまと一緒に、今後のスペースポートシティを考えていきたい」と締めくくりました。

多くの参加者がうなずきながら、ときに嘆息の声をあげながら、宇宙ビジネスの現状と展望について真剣に聞き入った1時間。

他人事だと思っていた宇宙ビジネスが、実は自分のごく身近な存在に捉えられ、ワクワクするアイデアが浮かんだ参加者も少なくなかったようです。

 

「自社(自分)なら何ができる?」スペースポートシティ構想の進化と参加目標を見つけよう

前日のSPJ共同創業者&理事 / 宇宙エバンジェリスト 青木 英剛氏の講演に続き、本日はSPJ 共同創業者&理事 片山 俊大氏によるワークショップが行われました。

片山氏のプロフィールや宇宙への関わりのきっかけは、こちらの記事をご覧ください。

https://gensen-beppu.com/2021/03/11/spaceportjapan_oitabeppu/

『スペースポートシティ』は、宇宙でなく地上の話」と繰り返す片山氏。地上のことは、宇宙関係者だけで進められるものではなく、その土地で暮らす人たちが協力して進めていくものです。まさに、この土地で暮らす私たちの取り組むべきテーマなのです。

今回のワークショップの目的はふたつ。ひとつは「大分スペースポートシティ構想」の進化。スペースポートマップのアップデートを行います。

もうひとつは「参加者(個人・社会)の目標設定」。明日から具体的に何ができるのかを考えます。

東京の企業、大分の企業・個人、そして大分県庁からも専門チームが参画しました。

まずは大分・別府の特徴を把握することから

まずは大分県のプレゼンテーションから。

一般社団法人 別府市産業連携・協働プラットフォーム B-biz LINK(以下、B-biz LINK)の池田より概要が話されました。

大分県の総生産額は4.6兆円で、産業は農林水産業、製造業、サービス業が中心。「宇宙産業」「 アバター」「ドローン」「5G」など新産業への挑戦が始まっています。

別府市は「豊富な温泉資源」「観光産業が主力」「3つの大学」が特色です。

9割を占めるのは3次産業。国内は福岡から、海外はアジア圏からの旅行者が増加しており、「星野リゾート」や「ホテルアマネク」など外部資本の参入が増加傾向にあります。

また「立命館アジア太平洋大学(APU)」「別府大学・別府大学短期大学部」「別府溝部学園短期大学」と、3つの個性的な大学があり、多様な人種が集まっています。約8,000人の、県外・海外からの大学生が住む街でもあるのです。

「宇宙についてのアイデアを巡らせる」ワークショップ

ここから、グループに分かれてワークショップがスタートしました。グループは、企業や団体が混在した構成になっています。ディスカッション前に、グループごとの自己紹介がありました。

参加者各々が、「なぜ今回参加したのか」「宇宙についてはあまり知らなくて……」などそれぞれの現時点での想いを交わしました。笑い声も聞こえ、緊張もほぐれた様子。

空気も和んだところで、「大分スペースポート構想」と題し、実現したいことの議論を開始。

議論のポイントは3つ「① 会社の立場 / 実現可能性等は、一旦忘れる」「② 顧客(B2BおよびB2C)の立場で考える」「③ 自分自身が実現したい想いを入れ込む」です。

早速ペンを持ち始めるグループ、とにかくアイデアを出し合うグループと、様々。大きな笑い声も聞こえ、活発な意見交換が進んでいます。

大分在住者に県外参加者が質問したり、逆に何が足りなかったか聞いてみたり。普段は触れ合う機会の少ない交流が生まれ、新鮮な意見や視点が飛び出しました。

グループごとのアイデアを壁に貼り出し、それを眺める参加者たち。それぞれに違うアイデアが書かれていたり、思いがけず同じような意見があったり、見るだけでもワクワクする内容が盛りだくさんです。

湧きあがる多様なアイデア

後半戦は、業界が近い各社ごとにグループを組み替え、「大分スペースポート構想」各社の役割や実現可能性を重視した議論を交わす流れになりました。

後半の議論のポイントは「①前半WSで議論したことを踏まえた、事業アイデア」「② 『自身の会社の課題解決』と『事業企画の接点』を探す」「③『長期的に実現すること』と『すぐにできること』を考える」の3つ。

先程よりもやや落ち着いた雰囲気で、さらに議論を重ねる人、文章を練る人などが見られました。

最後は、各グループによる発表と、それに対するSPJの片山氏・青木氏からのコメントです。

残念ながら詳しい内容はここで明かせませんが、それぞれの事業に絡めた興味深いアイデアと構想が次々と発表されました。

突拍子もないと思われる内容がすでに実現化へ向けて進んでいたり、実はいい着眼点だったり。片山氏・青山氏のコメントには、目からウロコの事実がたくさんあり、会場からどよめきが起こる場面も。

宇宙を舞台にしたアイデアは無限で可能性が広がっており、夢みたいに見えても意外と核心をついていること、やりたいと思えば接点を作れることなどが身にしみて理解できたワークショップでした。

誰もが身近に、自分のビジネスとして展開できる土壌を持った「宇宙ビジネス」。いろいろな角度から参加し、盛り上げていける「スペースポートシティ」構想。

宇宙には夢がある、ビジネスチャンスもある!参加者たちの期待と夢とアイデアが今後も大きく膨らみ、ますます盛り上がりをみせそうです。

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